アイアムアヒーローは陰キャが読むべき漫画(感想と考察)
先日TSUTAYAに行ってみると、準新作100円セールがやっていた。そこで年間のランキングがずらっとならんでいて14、15位くらいのところにありました「アイアムアヒーロー」。ちらっと聞いたり書店で並んでいるのを見たことがあったので借りることに。内容としてはすごく薄かったんですが、ゾンビのクオリティが高く個人的にはすごく楽しめたんですね。ところがよくよく調べてみると原作ガン無視だったそうで原作厨の方は荒れていた。じゃあ原作の方はどうなんだとAMAZONレビューを見てみると、これがひどい。
レビューひくっ。「最後は投げやり」「作者と人間性を疑う」「オ〇二ー漫画」などなど……おいそのセリフ花沢健吾に面と向かって言えんのか?まぁ言えない奴らがレビューを書くんだけど……そんなレビューを読んでいくうちに気になった。どれくらいクソ漫画なんだ?終盤のブリーチぐらいクソなのか!?読むしかない!!!再びTSUTAYAに行って借りて読んだ。(TSUTAYAは漫画なら20冊を1080円で一週間借りれます。)一巻にかかる時間がそれほど多くない漫画なのですいすい読める。怒涛の展開に目が離せない。一気に全巻読み切った。結論から言うとこの漫画をクソというやつは幸せもんだ。
※以降自分なりの解釈、気になった点などを書きます。当然ネタバレも含みますので注意してください。
①みんなが納得しない点。
1.ZQNって結局何だよ
ほんとZQNってなんだよ……噛まれたら感染するし、戦闘型とか役割決まってるし挙句の果てには固まってオブジェになるし……基本的にここが明かされないから批判の的になる。僕もZQNって何なんだろうとはずっと思ってた。結果的にはクルスが元凶ということしか分からないんだけど。
クルスが先かZQNが先か、なぜZQNは人を襲うのか、サンライズビルを守ったのはなぜか?巣とは、ZQNとは……全て意味はないんだろう。多分。スコップ男が選ばれたとか次世代の王とか言ってるが、それはこいつの妄想でしかない。
人間と一緒。生まれた意味、生きる意味、目的、人生とは?死んだらどうなるの?いや分かんねぇじゃん!!!!!なぜ意味のないものに意味を見出そうとするの?そんな思考回路してるから22巻を読んだ後に「コストに見合わねぇ!!金返せ!!」と思ったんだろうなぁ、途中まではワクワクしてたくせにね。最後でつまずいたら一気に逆切れだから理不尽だよなぁ。
2.比呂美ちゃんどうなったん?
比呂美ちゃんは最終的にZQNの固まりの主となりその後オブジェになった。比呂美ちゃんにももちろん正の部分と負の部分があり負の部分が暴走して英雄を殺そうとするわけだけど、最終的には「一緒に生きるよ」と約束した英雄を殺しはしなかった。(比呂美ちゃんについては英雄と一緒に後述)
3.なんでおばちゃん若返ったん?
「あの娘が助けてくれたんでしゅよ…」コロリ先生こんな危機的状況でこれが分かるなんてすごくね。スコップ男は自分より格上の男を殺したいから、クルスは意味もなく人を殺してたんだけど、コロリ隊の女の子が「生かそうよ」と言ってくれたからおばちゃんは殺されずに種繁栄のために若返った。
それにしてもスコップ男は裸の王様だと自分でさんざん自嘲しときながら見られたいがために「人間を生かす」という提案を受け入れるのは少し無理があるんじゃね
②個人的な感想
1.毅死んだの悲しすぎる
これが一番だろ。クルスの右腕として的確な状況判断、ZQNを仕留める戦闘力。カッコいいセリフを言うときはママチャリに乗ったり合わせ鏡を二枚持ちしたり、基本的にダサいことをしているのが個人的には好きだった。
死後も亜種となってコロリ隊と戦ったり、首を挿げ替えられ再び最前線まで突っ込んでいったところを見ると、クルスが使い勝手のいい戦闘員にしようと殺したのかもしれない。戦闘を行うだけだったら人間よりZQNの方がいいからね。
2.コロリ先生と片桐仁(実写版でコロリ役)が激似
似すぎだろ。ちなみに現在youtubeでは小林賢太郎と片桐仁からなるユニット「ラーメンズ」のコントが公式から全て見れます。ラーメンズで笑わないやつは人間じゃない。是非
3.ZQN自然を超越してんじゃん…
小田さんが最後になんで井浦の名前を呼んだかずっと分からなかった。井浦としたことないと言ってたし…まぁ結末はあのとき井浦のナニを使って妹としてたからなんだけどね。井浦の目を潰したのは小田さんの妹だし、海岸で英雄たちを追いかけていたZQNの司令塔が比呂美ちゃんだったりするわけで時間軸は一直線ではない。クルスが比呂美ちゃんにナイフをあてることができたみたいに、ZQNは時間と空間を超越することができるんだろうなぁ。
4.死ぬ奴、生きるやつ
死ぬやつは顔が汚いやつが多かったな。比呂美ちゃんをいじめてた奴ら、モールのヤンキー、警備隊のデブ、浅田などなど。ブスという意味ではない、こいつらは性格の悪さが滲みでているような顔をしていた。闇金ウシジマくんにも似たようなところあるよね。
一方で生き残った人間、彼らに共通するのは多分助け合いの精神を持っていることなんだろう。自分さえ生き残ればいいと欲望のままに行動しないやつ、おばちゃんが言うところの「まともな人間」。もちろん小田さんや毅など死んだ中にも多くいたんだけど、そんな人たちも死んでしまうのが悲しい。
5.苫米地という男
そんな中で一人、自己中精神を持ちながらも生き残った苫米地。武器を作ったりZQNを解体して血を車に塗ったりクルスに殺されず生き延びたり何者だったんだお前は。死んだ奴の特徴でも挙げた、汚い顔をしているわけでもなく時折意志の強い表情を見せた。ZQNにより関心を持っていたからナビゲート役のキャラだったのかもしれない。
かなり頭のキレる苫米地でさえクルスとZQNの固まりを「理解できない」と発言していることから、やはり「理解できない」=「意味はない」なんだと思う。
個人的に19巻に出てくる二足歩行ZQNに顔や考察好きなところが似ている。(ヒゲのラインが若干違う)この世界では時間も空間も関係ないからこの二つが同一ということはまぁなくもない。
6.残念賞、鈴木英雄
伊豆に向かった人間の他に唯一生き残った描写がある人間、鈴木英雄。英雄の前に比呂美ちゃんの最後に関して少し書く。比呂美ちゃんが主に選ばれたのは負の力?が他の人よりも多かったから。実際英雄の勘違いでライフルで撃たれまくり、ギャク切れして無残な姿になる。しかしそんな比呂美に負の力に立ち向かう生きる力をくれたのが鈴木英雄という男である。「……生きて英雄くん」というのは一緒に生きると約束したから。もしたしたらこのとき比呂美ちゃんは生きることの素晴らしさを感じたのかもしれない。まさにヒーロー。
ただし英雄が残念なところは中田コロリや編集長(ZQNになる直前にスズキにネームを書かせようと言っていた)など周りに影響を与えていることに全く気付かないこと。アホ、鈍感なのである。その鈍感さゆえに小田さんの死後にセックスしてしまったり、一人で東京サバイバルを繰り広げるポジティブさを見せる。
みんなが一つになるということはZQNの目的の一つであったが、実際一つになってみると脳内2chでケンカばかり。伊豆に避難できたメンツは個性がバラバラにも関わらず、助け合って生きていた。ここにも人を思いやるメッセージ性が感じられるが、一方の英雄は農業したり銃弾作ったり東京で一人暮らし。
あの頃に戻れなくてもいいとさえ言うくせに「かかってこいよオレの人生」などとほざく。人生はとっくにかかってんだよ。ただお前自身が何とも思わなかっただけなんだよ。自身の才能に気付かないのは当たり前と思っているからなんだろう。
全体を通してみるとまあまあひねくれた作品だった。でも作者の人生観が表れていてすごく良かった。おそらく花沢健吾はこう書かないとメッセージを伝えられなかったんだろうな。理解できない奴は理解してくれなくていい、そんなスタンスで書いているのかもしれない。人生でスポットライトを浴びたことのない奴にオススメ。マンガワンでも連載が始まったので是非。伏線厨は読むなよ。